コラムColumn
予防

ねこの避妊手術について

猫の避妊手術とは・・・

猫の避妊手術は、卵巣 もしくは 子宮と卵巣を摘出する手術です。

メスに特有の子宮・卵巣・乳腺の病気を予防する、発情時の行動を抑制してストレスを軽減させる、そして望まぬ妊娠を防ぐことを目的として行われます。

手術の時期

当院ではメス猫の成長や性成熟、乳腺腫瘍の予防などを考慮して5~7か月齢での手術をおすすめしています。

下記でもう少し詳しく猫の成長や性成熟、発情時の様子についてお伝えします。

メス猫の成長と性成熟

〇成長

5~6か月齢になるとほとんどのメス猫は体重が2㎏を超えて体格的にもしっかりとしてきます。

その後も体は緩やかに成長し、生後12か月齢くらいで成猫になります(大型の猫種は1歳半頃)。

〇性成熟

一般的には生後8~10カ月齢で、多くの子が初回の発情期を迎えます。

(発育状態が良い場合はこれより早くに初回発情を迎える場合もありますし、長毛種や大型の猫種の場合はこれよりも遅く初回発情を迎える場合もあります)

猫は季節繁殖動物で、子供を産んで育てやすく育ちやすい春から秋にかけて数度の発情があります

(日照時間と関係があり、屋内飼育の猫では夜間照明の影響で季節関係なく発情することもあります)

期間中、メス猫は「発情前期」「発情期」「発情後期」「発情休止期」の周期で発情を繰り返します。

一回の発情の期間は約10日~2週間です。これを2~3週間間隔で2・3回繰り返し、1~2ヶ月の間をおいて再び発情兆候が始まるというパターンが多いです。

発情期の様子

  • 犬と違い陰部の腫脹や出血などはありません
  • ロードシスといわれる特徴的なしぐさが見られます(腰から尾の付け根のあたりを優しく触ると、伏せた状態で腰を少し高くし、尾を外巻きにして、足踏みするなどの行動)
  • 人間の赤ちゃんが泣くような、いつもとは違う大きな声で鳴きます
  • 床に転がってゴロゴロする
  • 外に出たがるようになる
  • 飼い主さんの足に体をこすりつけて甘える
  • いつもと違う所でおしっこをしてしまう

手術のメリット・デメリット

手術のメリット

望まない妊娠の予防

猫は交尾排卵動物です。犬や人間と異なり、交尾の刺激で排卵をするため、交尾をすれば高い確率で妊娠をします。

妊娠期間は約2か月です。1度の妊娠で平均5匹(3~8匹)の子供が生まれ、子猫が離乳するとまた妊娠が可能となります。あっという間に何十匹にも増えてしまうのです。

このため、不幸な猫達を増やさないようにするには、少しでも外へ出る可能性がある猫ちゃんは、オスもメスも去勢・避妊手術をすることが大切です。

病気の予防

  • 猫エイズウイルス感染症や猫白血病ウイルス感染症などの感染症リスクを低下させる(交配による感染のリスクがなくなるため)
  • 乳腺癌や子宮蓄膿症などの生殖器疾患の発生リスクが下がる

(猫の乳腺にできるしこりの約8割は乳腺癌です。乳腺癌は悪性腫瘍の中でも悪性度が高く、高率に肺転移をします。)

手術のタイミングの違いによる予防効果が具体的な数値で示されており、6ヶ月齢前で91%、7~12ヶ月齢で86%、13~24ヶ月齢で11%乳がんの発生率が低下すると報告されています。

1才を超えてからだと予防効果はかなり落ちてしまう上、2才を超えると残念ながら乳腺癌の予防効果はなくなってしまいます。「なるべく早期」の避妊手術が乳腺癌の予防には効果的といえます。

出典 : Overlay B, JVIM, 2015

発情期のストレスから解放される

猫の発情期での行動は猫自身にストレスを感じさせることはもちろん、一緒に暮らしている人も鳴き声やその他の行動でのストレスを感じるでしょう。手術をすることでこういったストレスからネコも人も解放されます。

手術のデメリット

全身麻酔のリスク

手術は麻酔前検査を行った上で実施可能と判断した場合に実施します。

猫の不妊手術の麻酔時間自体は約30分程度ですが、全身麻酔をして開腹での手術になりますので、一定のリスクはあります(ごくごくわずかな確率ながら麻酔薬に対する過敏反応を起こす場合があります)。

太りやすくなる

これまで生殖に費やしていたエネルギーがなくなり、それに反して食欲は増す傾向にあります。

また、子猫の頃は毎日おうちで走り回っていた子がほとんど走らなくなるため手術後はカロリー調整が必要に

なってくることが多いです。遊びを増やしたり、フードの量や種類を調整する工夫が必要となります。

当院での手術の流れ

① ご予約前に一度ご来院(診察・手術についてのご説明)

② 手術当日(予約制)

 お預り⇒術前検査(胸部レントゲン・簡易血液検査)⇒手術(麻酔の導入から覚醒まで約30分)⇒お迎え

③ 再診(傷のチェック): 7~10日後

費用

¥27,500(税込み)

  • 手術費用には、術前検査(血液・胸部レントゲン検査)、麻酔、痛み止めの注射などがすべて含まれています。
  • 中高齢の場合、術前の検査内容の追加や麻酔薬の変更などがあるため、追加で費用がかかります。
  • 妊娠中の場合は別途費用がかかります。

Q and A

避妊手術直後はどう生活するの?

基本的には食事や運動など大きな制限はありません。手術跡をなめたり汚したりしないようにお願いしています。
エリザベスカラー(貸出しあり)や術後服などを利用して1週間ほど生活します。
手術直後から特に以前と変わりなく生活できる子もいますが、やはり手術直後の1~2日はいつもよりも少し大人しい子が多いようです。
直後は傷もありますし、かわいそうで手術しない方が良かったのではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、1週間後の再診(抜糸)の際にはみんな元気いっぱいです。

入院はする?

日帰り手術となります。

ペット保険は使える?

多くの保険で保険適応外の手術となります。詳しくはご加入のペット保険にお問い合わせください。

耳カットできる?

猫ちゃんの飼育環境によって必要と判断した場合は、女の子は左耳・男の子は右耳をV字にカットできます。

ワクチン接種と同時に手術できる?

手術とワクチン接種は同時にはできません。

発情している時に手術できる?

発情中の手術は、子宮組織の充血や血管が太くなっている等の理由から通常時の手術より出血が多くなります。
また、発情時には子宮全体が大きくなり、もろくなるため、通常時に行う手術よりリスクが若干高くなります。
病気ではなく予防としての手術になりますので本来は発情期中の手術はオススメはしませんが、実際は発情中の鳴き声にお困りや妊娠の可能性がある場合はその時期に手術することもあります。

自治体での助成などはありますか?

印西市では地域猫に対する助成があります。

https://www.city.inzai.lg.jp/0000009102.html